株式会社LAZARUS(ラザロ) - 大阪市中央区本町の歯科技工所株式会社LAZARUS(ラザロ) - 大阪市中央区本町の歯科技工所

ACTIVITY / 活動報告

2019-11-14 10:01:00

沖縄出張・歯科業界に想ふ事etc・・

 こんにちは、人生常に反抗期の村田です。 先日、日本歯科新聞に下のような記事が載っていました。

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 現在の日本の歯科技工士業界が抱える問題を、かなり網羅した内容ではないでしょうか。 私も読んで、いろんなことを考えるキッカケになりました。

 

 やはり今の技工業界の大きな問題点として、「ダンピング」があります。 ダンピングとは「不当廉売」の事で、市場の健全な競争を阻害するほど、不当に安い価格で販売することを言います。 本当に歯科技工業界は、ダンピングの歴史と共に歩んできたと言っても過言ではありません。 歯科医院に不当なダンピングを要請され、それに応えてしまう技工所が多く存在しているのが事実なんです(もちろん、仕事を得る為に技工士自らあり得ない価格設定にするのもダンピングです)。

 

 でもハッキリ申し上げますが、もうそんな時代ではありません。 このままダンピング競争を続けると、我々の歯科業界が破綻する事は目に見えています。

 

 現在、歯科技工士が減っている事は耳にしたことがあると思います。 でも、どのくらいの人がこれに危機感を抱いているのでしょうか? もう悠長な事を言っていられない状況なんです。 本当にヤバイんです。 以下が現状です。

 

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 どうでしょうか? これでも数年前のデータなんで、現状はもっと悪い状況だと思います。 

 

 今は50代、60代以上の方々がバリバリ活躍してくださっているので、なんとか保険技工もまかなえていますが、(大変失礼な言い方になりますが)ごく近い将来、この層の先輩方は引退されます。 先輩方が引退された後は、誰が歯を作るのでしょうか(特に保険技工)?

 

 ダンピングを続けていくと破綻する理由は以下の通りです。

 

「歯科医院にダンピング要請された場合」

 歯科医院が不当なダンピング要請をし、技工所がそれを受け入れる

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 技工料がただでさえ薄利なのにもっと薄利になり、長時間労働を余儀なくされる

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 人手が欲しくても、超売り手市場の歯科技工学生がそんな労働環境のラボには就職しない

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 慢性的な人出不足で激務がたたり、身体を壊してしまう・やむをえず思い切って値上げをする

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 歯科医院は安いラボに乗り換える

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 新しいラボも、同じ展開で値上げすることになる

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 そうこうしているうちに、もう当たり前のようにダンピング要請してくる歯科医院に安く作ってくれるラボがいなくなる

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 歯科医が自分で補綴物を作製する・作製できない歯科医は、患者に補綴を提供できなくなる

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 歯科医院の経営が成り立たなくなり、廃業する。最終的に不利益を被るのは患者

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 歯科医院が減ると、当然歯科技工所も経営が成り立たなくなり、廃業する事になる

 

「技工所自らダンピングした場合」

 仕事を得るために、限界を超えた値引きをしてしまう

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 もちろん安ければ仕事依頼は増えるが、利益を出すために睡眠時間や休日を削って作業する

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 人手が欲しくても、薄利多売ではなかなか雇用できるような余裕はできない。できたとしても、超売り手市場の歯科技工学生がそんな労働環境のラボには就職しない

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 慢性的な人出不足で激務がたたり、身体を壊してしまう

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 仕事どころではなくなってしまう

  

 かなり突拍子も無い展開に思えるかもしれませんが、こういう展開が予想される訳です。 自分達で自分達の首を絞めているのが現状なんです。 もちろん、歯科医院から要請されることなく、勝手に技工所側がダンピングすることもたくさんあると思います。 昔のように、歯科技工士がたくさんいた時代はそれでもよかったのかもしれませんが、もうこれからはそんな時代ではありません。 

 

 まだ自費は価格の下げ幅があるかもしれませんが、保険技工はそもそも下げ幅が無いんです。 「もっと安くしろ!」「もっと納期を早めろ!」と言うのは、「ただで作れ!」「不眠不休で仕事しろ!」と言っているようなものなんです。 実際に、「最終クラウンの仕事をもらえるなら、コアやテックは無料で作る」というラボがあると聞いたことがあります。 こんな事は絶対にしてはいけません。 コアもテックも、作製には非常に時間がかかります。 絶対にタダで出来る仕事では無いはずです。 健康を害してまでやる仕事はこの世には無いと思っています。

 

 日本人の技工士が減ったら、もしかしたら、安い外国製の補綴の輸入を日本でも認めざるを得ない状況になるのではないでしょうか(諸外国の「ライセンスの無い」技工士さんが作った補綴です)。 でも、世界中で色々見てきた私から言わせれば、あれを口腔内に入れるのはあまりにも患者さんが可哀想です。 それくらい、日本の技工士のレベル(教育・技術含めて)は高いんです。 

 

 かくいう私も、開業当初あまりにも仕事がなくて、とんでもないダンピングに応じてしまったことがあります(ここで書くのは恥ずかしすぎる条件でした)。 最初は「仕事ゼロよりマシかな・・」と思って引き受けたのですが、歯を作っている間、「ずっとお金のことを考えている」と言う状況になってしまったんです。 「本当だったら、これはこんだけもらえるのになあ・・・」ということばかり考えてしまうんです。 「いい補綴を作ろう」という意識は当時の私からは消え失せ、ただただ「医院への憎しみ」だけが頭を巡っている状況でした。 仮にも「仕事を頂いている身」でありながら、こんな状態になってしまっていたんです。

 

 結局そんな状況が続くわけもなく、その医院とは切れてしまいました。 でも、悪いのは医院ではなく私なんです。 こんなダンピングに乗ってしまったのが全ての間違いなんです。 今となっては自分にとっては良い経験ですが、こんな経験は、しないに越した事はありません(人格がひん曲がります 笑)。

 

 このように、「お金のことを考えずに、いい歯を作る事に集中するため」にも、ちゃんとしたチャージを頂かないといけないんです。 だからダンピングは絶対にダメなんです。

 

 もちろん、「お金はちゃんと払うので、いい仕事をしてほしい」と言ってくださる先生方もたくさんいます。 こういう先生方と一緒に仕事ができている状況が、弊社の誇りであり、私の誇りです。

 

 

 さて、「デジタルが発展すれば、技工士不足を解消できるのでは」という考えがありますが、これは私は甘いと思います。 弊社も、世界中で最先端のデジタルを視察し、最先端のデジタル機器を導入して臨床を行っておりますが、残念ながら技工士不足を解消できるようなものではありません。

 弊社にもCAD/CAMオペレーターが多数在籍しておりますが、彼らはれっきとした「職人」です。 当然、全員歯科技工士免許を持っています(なかにはトレセン出身者もいる)。 その辺のパソコンが得意なオバちゃんを連れてきて、すぐに出来るようになるような世界ではありません。 加工機のメンテナンスも、非常に大変で労力のかかる作業です。 この世界も、技術を継承するには「時間」「お金」「労力」がかかります。

 

 インハウス(歯科医院で、口腔内スキャン・デザイン・削り出し・完成まで行うこと)が進むのも大変良いことだとは思いますが、タダでさえ1分1秒惜しむくらい忙しいドクターが、診療の合間に片手間に出来る作業では無いのではと私は思います(少なくとも現時点のデジタルでは)。 

 

 デジタルはあくまでも「道具」です。 間違いなく「便利なもの」ですが、「都合のいいもの」ではありません。 道具を使いこなすのは我々職人です。 今一度、「技術」というものを見直す時期に来たんだと思います。

 

 

 先日久々に、尊敬する片岡繁夫先生とゆっくりお話させて頂く機会がありました。 片岡先生は現在世界中を飛び回られていますが、なんと世界中でカービングを指導してらっしゃるとの事です。

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 デジタルの面では日本の何倍も先を行っている諸外国が、なぜ今さら石膏棒を削る事に立ち返っているのでしょうか? もう、答えは言わずもがなです。 「技術」とは、そんなに簡単にデジタルに負けるものでは無いんです。 それに諸外国は気づいたのではないでしょうか。 そんな尊い技術を不当にダンピングするのは、本当にもうやめましょう。

 

 正しいことを正しく行えば、歯科技工士という仕事は本当に素晴らしい仕事だと思っています。 こういう意見は、一定数の人にはどうしても批判されるとは思いますが、技工士業界が「あるべき姿」に少しでも近づくように、来年は何か行動したいと思っております。  

 


 

先日、今年10回目(!!)の沖縄に行ってまいりました。 今回は、那覇の取引先の挨拶回りや立会い、そして新規ご紹介頂いた医院にご挨拶に伺ってきました。

 

 まだ沖縄は半袖でも十分過ごせる気候で、大変心地よかったです。 歯科医院に伺う時にタクシーに乗った時におじいさんの運転手さんが場所がわからなく、「電話番号教えて〜」と言うので伝えたんです。 で、ナビに電話番号入れるのかなと思ってたらどこかに電話しだしたんで、「沖縄ではナビはあまり使わずに、タクシー会社本部に電話して教えてもらうシステムなんかな?」と思ってたら、まさかの医院に電話して直接聞くという(笑)。 「どこも痛くないよ〜」と答えてたんで、医院は患者さんだと思ったのでしょうね(笑)。 沖縄らしい(?)エピソードです。

 

 

 今回は空き時間が結構あったので、首里城に行ってきました。 実は1ヶ月前から、今回の沖縄訪問で首里城に初めて行くつもりだったんです。 でも、先日あの火災が起きてしまい・・・。

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 沖縄の人々の「誇り」とも言うべき首里城の火災は、沖縄人ではない自分にとっても本当にショックなニュースでした。 もちろん中には入れませんでしたが、まだ焼けた匂いなんかも感じる状況でした。 そして再建を心から祈ってまいりました。

 

 最近は首里城に限らず、城や神社や仏閣なんかを見に行くのが非常に好きになってきました。 若い頃には全然興味なかったんですが、これも「老い」かなあ・・・と感じます(笑)。

 ちなみに私は宗教的な事は一切興味がありませんが、昔の建造物を見ていると、非常に心が落ち着くんです。 いわゆる「パワースポット」と言われるのはこういう事でしょうか? 

 で、なぜこんなにも落ち着くのかなあと考えてみたのですが、個人的には「職人魂をビシビシ感じるから」という結論になりました。 城や神社や仏閣は、古(いにしえ)の職人さん達の技術の結晶です。 宮大工さんや仏師さんの素晴らしい職人技は、何百年経っても人の心を癒し続けるんですね。 私も職人のはしくれ(本当にはしくれですが 笑)として、何か感じることがあるんだと思います。

 

 ところで、皆さんは「遷宮(せんぐう)」をご存知でしょうか? 遷宮とは、神社の本殿を、同じ境内であっても定期的に別の場所に新築移転する事です。 全ての神社が行なっているわけではありませんが、伊勢神宮(三重県)や天照皇大神宮(福岡県)なんかは、20年毎に必ず遷宮を行います。

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 でも20年って短いですよね?? 20年だと建て替えるほどのガタは来ていないはずです。 では、なぜ20年毎にわざわざ本殿を作り変えるのでしょうか?

 

            理由は

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        宮大工の技術継承のため 

 

 諸説ありますが、平均寿命の短かった当時に、宮大工の師匠から弟子への技術継承をするためと言われています。 そのしきたりで、現在も宮大工の技術を絶やす事なく継承できているとのことです。

 

 これは素晴らしい風習だと思います。 作るものの規模は違いますが、我々歯科技工士も宮大工と同じく職人です。 技術継承には時間と労力とお金がかかります。 

  また今の時代、3Dプリンターで仏像を作る事もできると思いますが、やはり職人の魂が入った仏像とは絶対に違うと思います。 こんなところはデジタルに負けません。 負けるわけがないんです。 我々歯科技工士もそうでありたいと思っています。

 それだけに、当たり前のようにダンピングされ、それを受け入れるような業界になってはいけないと心から思います。

 

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 見よ!! 本物だけが持つこの迫力!!

 

 「燃え盛る職人魂」とは、まさにこの事!!

 

  

 

 

 

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