株式会社LAZARUS(ラザロ) - 大阪市中央区本町の歯科技工所株式会社LAZARUS(ラザロ) - 大阪市中央区本町の歯科技工所

ACTIVITY / 活動報告

2024-06-09 13:22:00

トレセン卒業先品紹介 其の二

 前回からの続き

 

 かくして刃牙シリーズの新章「刃牙らへん 」を読んで、私はジャック・ハンマーの歯に強烈なインスピレーションを受けることとなったのです。

 

 さて、ここでジャック・ハンマーの説明をすることにしましょう。

 

 ジャックは主人公である範馬刃牙の異母兄であり、「地上最強の生物」と称される範馬勇次郎の息子であり、身長243cm、体重211kg の体格を誇る作中最強クラスのファイターです。

 

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 ジャックは範馬勇次郎と女性兵士であるジェーンとの間に生まれ、父親と生き別れて父親の愛情を受けることなく育ってきました。。

 

 ジャックの目標は刃牙と同じく「父親を超えること」であり、とにかく異常なまでにストイックにトレーニングをして強くなろうとします。

 

 「1日30時間のトレーニング」という ”矛盾” と何十種類の薬物投与、さらに骨延長術によって遂に最強の肉体を手に入れます。

 

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 とにかく「強くなること」以外は全く興味の無い男なんです。

 

 

 そして新シリーズでは、ジャックは自身の「噛みつき攻撃」を「噛道(ごうどう)」と名付けて武道まで昇華しました。

 

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 それにあたって歯を強化するために、なんとジャックは全ての歯をチタンに置き換えたのですッッッッッ!!!!

 

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 この描写を見て私は強烈に「これを作りたい」と感じ、作中と同じくチタンで作製することにしました。

 

 当初歯冠部をCADデザインしてそれをミリングしようとしましたが、なんかそれには違和感を感じたので、今回はかなり久々に「ワックスアップのダブルスキャン」で作製することにしました。

 

 

 

 

 

 作製するにあたり、排列や形態は作中の描写を参考にすることにしました。 具体的には、若干の乱排列や犬歯の顕著な発達をイメージして作製しました。

 

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 ジャックの臼歯部はきっと肉食獣の様相を呈してるだろうと想像し、肉食獣特有の「裂肉歯」をイメージし、臼歯部は機能咬頭も非機能咬頭も全て尖らせることにしました。

 

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 最初は「上下全てチタンクラウン」というのも考えたのですが・・・・、せっかくトレセンで築盛を学んだこと、そして "あるストーリー” を思いついたことにより、上顎は臼歯部も含めた「全顎陶材築盛」にて仕上げることとしました。

 

 

 これが完成した上顎です。 

 

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 これ・・・・どこかで見たことあると思いませんか・・・・???

 

 

 

 

 

 

 

 そう、範馬勇次郎の上顎歯列となります!!!

 

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 こちらも作製するにあたり、ジャックと同じく作中の描写を参考にすることにしました。具体的には「若干外開きの乱排列」「犬歯の顕著な発達」「テーパード気味の形態」などです。

 

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 どうでしょうか?? 合成してみても全く違和感なしッッ!!

 

 え、違和感あります??

 

 

 

 

 まあ、違和感あってもわたしは一向にかまわんッッ!!

 

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 また、勇次郎は一息でタバコを吸ってしまうほどの肺活量を持つヘビースモーカーなので「歯肉はメラニン色素沈着をしているだろう」と想像し、それを再現することにしました。

 

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 さて・・・範馬勇次郎と言えば・・・・

 

 

 

 

 そう、背中の「鬼の貌」です。

 

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 勇次郎は異常なまでに背中の「ヒッティングマッスル(打撃用筋肉)」が発達しており、本気を出した時にはその筋肉の筋肉の隆起が「鬼の貌」に見えるのです。

 

 さあ・・・こんな勇次郎の口腔内はどうなっているでしょうか・・・・??

 

 

 

 

 

 私もびっくりしたのですが、異常な咬合力からやはり口蓋隆起が確認できたのですが、その口蓋隆起が鬼の貌になっていたのですッッッ・・・・!!

 

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 さらに観察すると、なんと両側8番の咬合面も「鬼の貌」にッッッ・・・・!!

 

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 よく見ると右側は口が開いていて左側は閉じていますが、これは金剛力士像の「阿吽」の状態を再現しました。

 

 

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 ここでジャックの口腔内に話を戻しますが、やはりジャックにも当然、異常な咬合力由来の骨隆起が舌側に確認できました。

 

 

 

 

 で・・・・よく見るとジャックの舌裏の軟組織にも「鬼の貌」がッッッ・・・・!!

 

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 しかし父親の勇次郎や刃牙には背中に「鬼の貌」が浮かび上がる描写があるのですが、何故かジャックには作中その描写が無いので、今回の貌のデザインはドラゴンボールの「神龍」をイメージすることにしました。

 

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 なんか昔から神龍のデザインがすごく好きなんです。 この「無理なことは無理とハッキリ言う」と言うところも好きで(笑)。

 

 しかし正直、上下顎の「鬼の貌」の造形はめちゃくちゃ大変でした。 出来上がってもなんか顔つきや立体感に不満が残り、何度かやり直して時間めちゃくちゃかかりました。

 

 「リアルすぎず、かといってアニメチックすぎず、ギリギリありそう」というところがこだわりポイントで、ホワイトや赤や青の様々なカラーワックスを、絵の具のようにワックスペンにつけて盛り付けるのもなかなか大変な作業でした。

 

 

 さあ、 そしてさらに観察を続けると・・・・・、

 

 

 

 

 

 やはりジャックの両側8番にも「鬼の貌」がッッッ・・・・!! 

 

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 こちらも右側は開口で左側は閉口ですが、これは沖縄の「シーサー」を再現しました。 シーサーって実は必ず一対で、金剛力士像と同じく片方は開口で片方は閉口なんです。

 

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 しかしこのワックスアップをスキャンしたスタッフは、「なんやこの咬合面・・・・。 社長頭おかしくなったんかな・・。」と思ったことでしょう(スタッフには何を作成してるか、誰にも一切言ってなかった 笑)。

 

 

 

 

 ここで「ちょっと主人公である刃牙をないがしろにしてるなあ・・」と感じてたところ、このシーンを思い出しました。

 

 これは刃牙と父親である勇次郎がド付き合いをしている時、古代からやってきた「ピクル」という最強人類(何故古代からやって来たのかはこちら)が邪魔して来た際、刃牙が邪魔されたことに怒ってピクルを殴った時のシーンです。

 

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 このパンチによって、ピクルの下顎右側犬歯が折れるのですが、この犬歯は果たしてどこに行ったのでしょうか・・・???

 

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 ありました!!!

 

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 歯根の破折は歯髄腔も再現した上で、右側から殴られた際の状態をイメージしました。 ある程度歯根を作り、実際にディスクで刻みを入れて石膏鉗子で割ることにより、自然な破折面を再現しました。

 

 形態やサイズは、オスのマウンテンゴリラの下顎犬歯を参考にすることにしました。

 

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 いや〜〜〜・・・・なんでもデータってあるもんですね・・・(笑)。

 

 

 余談ですが、今回これを作製するにあたって実際に「ゴリラを感じたい」と思い、大阪にある天王寺動物園に行ってみたんです。

 

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 で、全然ゴリラに出会わないので飼育員の方に聞いてみると、「当園にゴリラはおりません」とのこと。

 

 なんでも日本にはゴリラがいる動物園は6箇所しかないらしく、日本ではゴリラは20頭くらいしかいない非常に貴重な存在だということが分かりました。 調べてみると、なんと値段は一頭8000万円・・・!!!

 

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 なので、今回ゴリラを感じながら作製することはできませんでした(なんやねん、ゴリラを感じるって笑)。

 

 

 さて歯冠部のサンプルは完成したのですが、これで作品作りは終わりません。

 

 『良い絵は良い額縁に入るべき』というポリシーがあり、ここから「見せ方」を考えることにしました。 

 

 

 まず作品の「台座」の部分は、サンプル作りが非常に上手な後輩にやり方を教えてもらいました。

 

 そしてディスプレイも、プラモデルやフィギア作製が趣味の後輩にアドバイスをもらい、写真立てを利用したり透明フィルムにプリントしたりして作りました。 

 

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 今回はサンプルを自由に脱着できるように、マグネット式にすることにしました。

 

 また、この作品のことを知らない方も分かるように、説明用の小冊子も作ることにしました。

 

  

 このようにサンプルは作製できたわけですが、今回は一つ作品としてこだわったことがあります。

 

 それは、この作品のテーマが「親子の絆」だというところです。

 

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 今回その絆をどう表現するか悩んだ結果・・・

 

 

 上下歯列が完璧に咬合しているいうことでそれを表現してみました。

 

 

 そして今回は作品名を「Blood ties (親子の絆)」とすることにしました。

 

 

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 そして以前も報告いたしましたが、この作品で念願の「片岡賞」をいただくことが出来ました(副賞として、同期の皆様から「アタオカ賞」の称号も頂きました 笑)!!

 

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 最後に西村好美先生に作品をみんなの前で総評して頂くのですが、その時に「チタンの研磨頑張ったなあ・・・」と褒めて頂きましたが・・・、僕が見て頂きたかったのはそこではなかったんですが・・・(笑)!!

 

 

  せっかく頑張って作った作品なので、ちゃんと撮影したいと思い、以前書籍の表紙の撮影でお世話になった北谷(沖縄)の写真屋さんで、プロの方に今回も撮影して頂きました。

 

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 あと・・・・この作品を作って非常に嬉しいことが一つありました。

 

 

 

 作っているうちに「作者の板垣恵介先生に見てもらえたらなあ・・・」と漠然と思っていたのですが、縁あって板垣先生に非常に近しい方と連絡を取ることができ・・・

 

 

 

 

 なんと板垣先生に見て頂くことが出来ました!!!

 

 実際に頂いたメール

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 これはファン冥利に尽きます・・。 

 

 

「グラップラー刃牙」を夢中で読んでいる中学生の俺、聞いてるか? 

 

 30年後、ほんの少しだけど板垣先生と繋がることができるぞ(笑)!

 

 

 

 

 最近プレバトが好きなんで(笑)、この作品について歌を詠んでみました。

 

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 以上、「本気でふざけた大人の遊び」でした。

 

 

 

 というわけで・・・・これをもってトレセン卒業作品紹介となっても・・・・

 

 

 

 わたしは一向にかまわんッッ!!

 

 

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